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では下からどうぞ。
新しい環境の中、双子の仔猫はすくすくと育った。
と言っても人間にしてみれば幼児から10歳くらいへの成長だが。
けれど、飼い主のアシュラさんはそれはもうにこやかに二匹の成長を喜んだ。
「二人とももう少ししたら良いお婿さんを選ばないといけないね」
とんでもなく気が早いが、少し天然の気のあるこの飼い主さんは本気だった。
お婿さん。
その言葉にファイとユゥイの二匹はぴーんと耳をはった。
((黒たんだー!))
仔猫の知ってる限りの狭い世界で一番大好きな相手、というとお互いと飼い主以外には黒いボス猫しかいない。
他の選択肢など思いつくはずもなく、未来の旦那様に二匹の脳内で勝手にボス猫が決定していた。
次の日、公園で日向ぼっこしながらそれを告げると、黒鋼は心底呆れたように二匹に言った。
「阿呆か。血統書付きの猫は同じように血統書が付いてる猫とくっつけられるんだよ」
黒鋼の言ったことが理解出来ない二匹はぽかん、と口を開いた。
「なんで…?」
「ファイも、ユゥイも黒たんが好きなのに」
「なんでもどうしてもないだろ。
俺は雑種だからな。お前らみたな血統書付きの猫の飼い主はわざわざそんな猫を選ばねえ。
まあ、お前らの飼い主はそんなに悪い人間じゃなさそうだから、ちゃんと良い猫を選んでくれるだろ」
黒鋼の言っていることの意味が良く分からない。
だって二匹とも黒鋼のことが大好きなのに。
とにもかくにも、お婿さんが黒鋼でないのだ、ということだけは理解した二匹は大粒の涙を零して泣いた。
さすがに可哀想だったのか、その日ばかりはボス猫は優しくて。泣きじゃくる二匹に黒鋼は根気強く付き合ってくれた。
それが余計に悲しくなってしまうことなんて、彼は知らないのだろうけれど。
ファイもユゥイもショックのあまりにご飯が喉を通らなくなってしまった。
二匹を飼い主が心配するのだが、いつも黒鋼の通るのを待っていた窓辺にもその姿を見せることはない。
ぎゅっと二匹で身を寄せ合って時間が通り過ぎるのを待っている。