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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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拍手御礼小話変更いたしました。
初心に戻って短めのお話を3種。

今までの御礼小話はこっちに下げました。
下からどうぞ。






日本国忍軍徒然苦労話・十九

 

木刀で素振りをしていた者も、竹刀で打ち合いをしていた者も、皆手を止めていた。
緊迫した空気が張り詰めている。
未だ忍の見習いの粋を出ない者であっても、今この時ばかりは常の鍛錬にはない緊張感を肌で感じ取らずにはいられない。
大勢の見習いや下忍達が鍛錬をするため、忍の詰所の近くには大きな修練場が備わっている。
城の庭に美しい木々が植わっているのとは裏腹に、この一画は広く整地され土色ばかりが目立っていた。

そのほぼ真ん中に、男が五、六人立っている。
ぐるりと一人を取り囲むようにしている男たちの方が数は多いのにも関わらず、囲まれた男は一向に身構える気配もない。
実戦ではなく、見習いたちに見学させるための模擬戦が行われようとしていた。
さすがに真剣は使わないが、男達は皆中忍以上の者である。刃をつぶしてある模擬刀とはいえ、下手をすると大怪我にもなりかねない。
にも関わらず、囲まれた男が得物を構える風はない。
居並ぶ人間を前に、傲岸不遜とも思える態度で実に悠然と構えていた。
むしろ緊張しているのは優位な立場のはずの囲む側の男達だった。間合いを詰めかねて、じりじりと男の周囲を窺うだけだ。
それも仕方のないことだった。
なにせ、囲まれているのは忍軍随一忍・黒鋼その人であるのだから。
敵味方の双方から悪鬼羅刹の如く恐れられている男相手に、模擬戦とはいえ戦いを挑まなくてはいけない忍たちは貧乏籤以外の何物でもない。
そんな緊迫感が一帯の空気を支配していた。

勝負がついたのはほんの一瞬。
緊張に耐え切れなくなった見物人の誰か、思わず手から竹刀を取り落とした時だった。

人が木の葉のように地面に落ちていくことなど、木の棒のように地面に倒れていくなど、本当にあるのだ、という実に呆気ない感想を皆が持ったに違いない。
声もなく、次々と体が崩折れていく。
いつその体に拳を打ち込んだかも分からない。あっという間の出来事だった。
ぽかんと見ている人間も呆けて口を開いたままである。
見習い達などは、いつも自分達に厳しく指導を行う下忍のさらに上の実力者である忍が倒されたのが信じられない。
慌てて、他の中忍、下忍が倒れた男達に気付けを行う。
「ざまあねえな」
にやりと黒鋼が笑うのにも、さすがに一同返す言葉がない。
いったいこの男の域に辿りつけるようになるまでには、どれほどの時間と修練を要するのやら。
そんな気の遠くなる見通しに、思わず挫けそうになる見習い達だった。

「まったく、黒鋼一人を相手に何をしているのやら」
「仕方ないですよー。黒様は特別製だし」
凛とした声と、ふわふわと呑気な声。二つがばっさりと澱んだ空気を切る。
慌てて一同が振り返ると、いつの間に来たものやら。珍しく略装の帝がすくっと立っていた。、その傍には金髪の男の姿がある。どうやら護衛らしい。
黒鋼が呆れたように声をかけた。
「先触れくらい寄越せ。こいつらが腰を抜かすだろうが」
ぐい、と指で示す先では、初めて間近で帝の顔を見るという椿事に、見習い達が畏れのあまり固まってしまっていた。
「自分たちの守護する相手の顔にいちいち驚いていてどうするのです」
たしかに、これから帝や姫巫女の身を守るべきはずの忍の卵がいちいちその対象者に畏まっていたのでは困る。
しかしながら、未だ実戦も、経験もろくにない彼らにそれを望むのも酷というものだ。
そう思ったらしいファイは帝の横でくすくすと笑いをかみ殺していた。
「私も久しく鍛錬をしておりませんわ。黒鋼、稽古相手を命じます」
直々に黒鋼に命じ、当然のようについて来いとその背中で促す主の姉に、まったく、と黒鋼はひとりごちた。
忍の修練場は使わない。
帝と日本国最強の忍。
彼ら二人が剣を合わせるとなると、これはもう姫巫女の結界の中でしか行えない。
そんなことを普通にしていたのでは、城の修繕が追いつかないのだ。

すたすたと去っていく三人の後姿を、皆無言で見送った。

しばらくして、見習いが呆然と呟いた。
「…天照様はよくこちらに来られるんでしょうか?」
「帝だけじゃない。月読様もだ」
答えを期待していたわけではなかったのだが、忍から疲れた声で返事があったことに見習いはホッとした。
「あの金髪の人は…」
「………黒鋼の…嫁だ」
「は!?」
黒鋼本人がいたら、即座に否定の言葉が入るのだが、生憎と本人はこの場にはいない。
本人がいくら否定していたとしても、忍軍内部に関わらず、城内ではすっかり「嫁」扱いなのだ。
「ちなみに月読様が一目置かれる魔術の使い手で、武器を持たせても生半な忍では太刀打ち出来ない」
「……嵐のような人たちですね」
思わず呟く見習いの肩を下忍がぽん、と叩いた。
「慣れろ」
この程度、慣れなければこれから先忍軍ではやっていけない。

 

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