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日本国忍軍徒然苦労話・十八
「ご指導、よろしくお願いいたします」
いつになく真剣な眼差しでファイは正座していた。
姿勢を正し、両の手を揃えて頭を下げるファイの前には数人の女忍達の姿。
大柄な黒髪赤眼の忍者が詰め所に怒鳴り込んで来たのは翌日のことだった。
「あいつに妙なこと吹き込んだヤツぁどいつだっ!」
黒鋼の怒声に幾人かの忍が脱兎の如く逃げ出したり、壁の隅まで必死に逃げたりした。
ちなみに彼らは疚しいことなど一切ないのだ。
黒鋼が単に怖かった。
件の黒鋼はというと、よほど急いていたらしく短い髪が若干乱れている。
うっすらと汗を浮かべる黒鋼を面白そうに見つめながら、昨日ファイと対峙していた女忍が面白そうに唇を綻ばせた。
「妙なことって失礼ねえ。気持ちよかったでしょう?」
それとも良くなかったの?と実に返答に困ることをにこにこと笑顔で尋ねる。
お前か、とぎろりと黒鋼に睨まれるのもどこ吹く風とばかりに女忍は口元に手を当てて、ほほ、と上品に笑い声を漏らす。
潜入を得手とする女忍も所作は洗練されていて実に優雅だ。黒鋼にとっては微妙に対応に困る姫君たちを連想させる。
「安心なさいな。実践でお教えしたわけではないのだから」
当たり前だ、と叫びだしたい気持ちをぐっと抑えて黒鋼は低い声で念押しする。
「…今後余計な真似するな」
底のほうからひしひしと黒鋼の怒りが感じ取れる声音に思わず逃げ損ねた忍は「何したんだー!?」と仲間を問いただしたくなった。
女忍は飽く迄嫣然と微笑む。
「余計だったかしら、『閨で殿方を満足させる方法』は」
とんでもなく良かった、などとは口が裂けても言えない黒鋼だった。
「ちなみに『さっさと済ませたい時に相手の男を簡単に果てさせる技』も教えてあるわ」
「…おい」