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またも予定に届ry…。
確実にこの話二十話超えますね(涙)
次回とその次が正念場(主に私が)
最近休日の午前中は部屋の片付けをしているので、けっこう体力を使います。
溜まっていたFRとかジュ○アとかマガジ○とかパンフとかを古紙回収にだすべく纏めているのですが…多いわ。
あとネタメモ。
私の部屋の九割は紙で埋まっている。
片付け途中で中学生時代のネタ帳を発掘してちょっと嬉しかったです。今でも使えるネタがあった!
FRとかは、要る人がいれば差し上げたいのだけれど、そんな呼びかけをする余裕がありませんでしたorz
さてさて、本日は職場の送別会なので今から出かけてきます~。
ついでに期日前投票もしてきます。
昨日までにご入金いただいた通販は全て発送済みです。
拍手ありがとうございます。
いつも励まされています。
では下からどうぞ。
眠っているのか、そうではないのか。
俯いてじっと黙りこくったファイの呼吸は深く、どちらともうかがい知れない。
けれど、いつも無防備に体を預けられていたはずの重みを、黒鋼がその肩に感じることはなかった。
まるで殻に閉じこもるように、ファイは身を固くして反対側扉に身を持たせかけている。
二人の体の間に横たわる空気の塊が、なんだかやけに大きい。
タクシーの精算を済ませ、一向に動こうとしないファイを黒鋼は慣れた動作で引きずり出す。
車内では傍に寄ろうとしなかった体だったが、それには逆うことなく従順に、黒鋼の促すままに身を預けてきた。
古びたアパートの扉の前で黒鋼はどちらの部屋に入ったものかと少し考える。一応確認のために「鍵は」とファイに聞くと、小さな声でポケット、胸の、と答えが返ってきた。
ファイが完全に眠っていなかったことに安堵しながら、黒鋼は示された鍵でファイの部屋の扉を開ける。
意外なほどに殺風景な部屋は、がらんとしていて生活感が感じられない。
唯一それなりに数があるのは部屋の片隅に押し込められた仕事用の服くらいで、その他の家具や雑貨などというものは壁際のベッドと折りたたみ式のテーブルのみ。他にめぼしい物は見当たらない。
灯りをつけ、取り合えずはファイをベッドに転がす。服に皺がつくのでは、とちらりと考えたが、動く気配のない人間の体を動かすのは骨が折れるので早々に思考を投げ出した。
「おい、水は飲むか」
ぐったりとしているファイに、声をかけるとややあってのろのろと首が黒鋼の方に回される。
「飲む」
掠れた声で呟くのに、分かったとだけ答え、冷蔵庫を開けるとどうにかミネラルウォーターのペットボトルがあった。
それ以外にはチーズと果物が申し訳程度に入っているばかりで、彼がここしばらくの間まともな食生活を送っていないのは一目で見て取れた。あるいはもっと前から、長い間かもしれない。
思わず眉を寄せた黒鋼は、店の人間に聞かされたことを思い出す。
『別れたらしいです、彼氏と』
荒れた原因はそれか、と考えながら頭のどこかはやけに冷静に否、と答えをはじき出す。
『でも、それくらいなら今までだってあったことなんですけど…。今回はなんだか凄く落ち込んでて』
コップに注がれた水がひんやりと黒鋼の手を冷やす。
『新しく入った男の子とか打ち上げにいく店の店員に、もう誰でもいいから慰めて欲しい、なんて言い出して宥めるのに大変なんですよ』
おまけに、同性愛者でなくとも思わずその言葉に浮かされて逆上せ上がる人間がいるので、余計に厄介なのだと店の若いバイトは嘆いていた。
健康なのが取り得の黒鋼だが、思わず頭が痛くなる。
「ほら」
ベッドの上で伸びているファイにコップを差し出せば、のろのろとファイの腕が上がる。
無言で起こせ、と要求している酔っ払いに呆れながらも、黒鋼は体を支えてやる。
受け取った水を一息に飲み干したファイから空になったコップを受け取り、シンクに放り込んだ。
ファイは上半身を起こした体勢のまま、ぼんやりとしている。
適当に自分の部屋に引き上げようと思っていたのだが、ファイが妙な酔い方をしているのではないかとふと心配になった黒鋼の前で、ファイがポツリと呼びかけてきた。
「ねえ偽者さん」
誰が誰の偽者だ、と返したくなるのをぐっと堪える。
どれだけこちらが本気で怒ったとしても相手は酔っ払っているのだ。徒労に終るのは目に見えていた。
「オレと寝てよ。オレの財布から好きなだけ取ってっていーから」
ファイの唐突な言葉に、黒鋼の心臓が氷の弾丸でも打ち込まれたように温度が下がったような気がした。
「どんなふうにしてもいいから」
思わず振り返った視線の先で、ファイが淡く微笑んでいた。ひどく、場違いな笑みだった。
「お前、そんな誘い方ばっかしてんのか」
「……そうだよ」
沈黙に、黒鋼の吐きだした息の音が落ちる。
相手の反応など心底気にもとめていないように、ファイは独りごちる。
「皆に、お金も体も何でも好きにしていいって言った。傍にいてくれたら、それでいいからって。
…でも、誰も傍にいてくれないなあ」
君も多分そうだよね。でも仕方ないね。
そんな風に自分の言いたいことだけ投げつけて、ファイはさっさと背を向けてベッドに横になってしまう。
叱るにしても、怒るにしても。黒鋼には返す言葉が何も出てこない。
投げやりな言葉以上に弱っているファイを、慰めてやりたいと思っても、そのための術が思いつかない。どうすればいいのか、本当に分からなくてただ、立ち尽くす以外なかった。
瞳を閉ざしていたファイは、足音が近寄るのを耳で拾っていた。すぐ傍で足音は止まり、ややあってファイの背中のすぐ後ろでベッドがぎし、と軋んだ。
誰でも、いい。そう思ったのは事実だ。
本当に好きな相手には、もうきっと手が届かないから。