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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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これにて遊女パラレル終了。


拍手ありがとうございます。

では下からどうぞ。








お試しのつもりで一回だけ。

そんな言葉で食い下がる相手がいい加減鬱陶しかったのもあるが、とにもかくにも宥め賺されるようにして初めて男を抱いた。
本人が客にも評判がいい、と自ら語っていたように、なるほど抱き心地は悪くはなかった。
それまで黒鋼は男を相手にすることなど想像すらしなかったが、衆道狂いや陰間茶屋に通いつめる人間がいるのも分かるような気がした。
女相手の経験ならば程々にはあるが、男の体が対象ではどうにも勝手が違う。時折戸惑う黒鋼を、ファイはそうとは分からないように上手く煽り、導いた。
いつも掴み所の知れない微笑を浮かべるだけの白皙が、淡く紅に染まり、堪えきれずに痛苦とも判別の出来ないあえかな声を漏らすのには、黒鋼も湧き上がる欲望を止められず、湯文字の絡みつく白い太腿を掴んで思うままにその体を揺さぶった。


だが、それなりに充足はしたのだが別段これから好き好んで男を抱くようなこともあるまい、そう思ったのだ。


未だ夜が明ける気配の遠い一室で黒鋼は衣服を整えた。
衣擦れの音で目が覚めたのか、黒鋼が起きた時はぴくりとも動かなかったファイが目を擦りながら起き上がる。
黒鋼がこれ以上ここにいるつもりがないのをちって、ファイも寝乱れた髪を手で梳いて一応の体裁を整える。さすがに寝起きのままで見送ることはせずに自身もどうにか見られる程度に身繕いをし、布団の脇に膝をついた。
黒鋼が名残を惜しんでずるずると別れの時間を引き延ばすような性格ではないのを知って、ファイも口先だけの愛想を言わない。
口にしたのは見送りの口上ではなく、黒様、といういつもの呼びかけと同じだった。
振り返る黒鋼にファイは照れくさそうに笑って見せた。いつも太夫とは思えないような顔を黒鋼に向けてくる相手だったが、それでも、いつもの微笑とは全く違う顔だった。
「あのね、オレ本当に好きな人としたのって初めてだったんだ。…すごく嬉しかった」
そう言って、ファイはありがとうございました、と深々と頭を下げた。
「我侭言って困らせないようにするからこれからも遊びに来てくれる?
お金なんかいらないし、黒様は女の人の方が気持ちいいんだろうなっていうのは分かってるから、もうこういうのも無くてもいいから」
花魁という呼び名は『尾いらん』と引っ掛けられることがある。狸や狐は化けて人を騙すが、遊女などというものは尻尾など無くとも口先一つで人を誑かすのだから、尻尾持ちよりもよほど性質が悪い、そんな嘆きとも嘲りともとれる言葉だ。
色里で、相手の言葉を信じる方が愚かなのだ。
ファイの言葉が真実だという証拠はどこにも無い。
一晩体を重ねただけの相手の言葉を信じるいわれなどどこにも無い。
黒鋼は何も答えなかった。






店の出入り口が騒がしいのに新造の四月一日は気がつく。
何かあったかとひょいと顔を覗かせると、奇妙な光景が広がっていた。
客がこの時間に帰るのは何も珍しい光景ではない。さすがに客同士が鉢合わせることはそうそう無いが、ちらほらと一夜を過ごした客たちが家路へとつき始める時間なのだ。
だから、黒鋼が見世を出ようとしているのは何もおかしいことではない。
問題はその肩に担いだ荷物もどき。
「黒様…せめてオレ、帯くらいはしたいんですけど~」
四月一日のかけている眼鏡が狂っているのでなければ、黒鋼の肩に担がれているのは、金襴の打ち掛けでぐるぐる巻きにされた青玉太夫だった。
帯くらいしたい、との言葉のとおり、簀巻き状態で担がれているその様に一体何があったのかと手の空いた者たちが遠巻きに様子を見ている。
「えー、と」
さすがにどう声をかけて良いものやら迷う四月一日の困惑を察してか、黒鋼の方から四月一日に声をかけてきた。
「通うのが面倒くせえ、持って帰るぞ」
「…はあ」
事情説明にしても端的過ぎたが。
「はーい、貰われて帰りまーす」
それすら気にせずよじよじと肩の上で身じろいだファイが明るく宣言する。
それを抱えなおすと黒鋼は懐から財布を取り出し、中身すら見ないで四月一日に投げて寄越した。
「足りねえ分は後で持ってくる」
その言葉に、本気でファイを連れて帰るのだと分かった。
何よりも、黒鋼の肩の上で笑うファイの顔からは太夫として張り詰めた表情は微塵も無くなっていた。
駕籠を用意させましょうかと聞く四月一日に自分で歩いた方が早い、と答えた黒鋼は本当にそのままファイを連れて帰った。


前代未聞に手軽すぎる太夫の身請けに楼主が大うけしたことは言うまでもない。
ひとしきり大笑いした後、早速ファイの今までの稼ぎから残りの身請け代を差し引いて黒鋼に届けさせた。


あんな馴れ初めで上手くいくのか、という周囲の不安をよそに、割と仲睦まじい様子で過ごしているのだと評判になった。
時折、ファイのかつての馴染み客が居場所を聞きつけて頼むから自分のものになってくれ、と家の前で土下座しているそうだが例外なく旦那に蹴散らされているらしい。


 

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