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多分3話くらい。
以前の小話の漢字クイズに相棒が答えたので、そのリク話です。
巨乳はOK。爆乳はNO。
「無理だ!」と感じた方は逃げてー(笑)
では下からどうぞー。
女の朝は戦場である。
ファイもその言葉の例外ではなく、窓から降り注ぐ清々しい朝の光をよそに出勤準備に追い立てられていた。
大きく空気を吸い込み、体にぐっと力を入れて下着を胸に巻く。
サイズの合わないそれに、布地と肌が悲鳴を上げているのだが、苦しいのは本人も同じこと。
無理矢理ホックを後ろ手に留めたことを確認すると、盛大に溜息をついた。
ぎゅうぎゅうと食い込むブラジャーのラインが痛い。
二つほどカップサイズの小さい下着をつけた胸は、どう見ても不恰好だった。
可能な範囲でどうにか苦しくないように調整して、なるべく体のラインのでないゆったりとしたシャツを着る。
勤務先である学園では、これに加えてだぼだぼの白衣を羽織るため、体のラインなど分からない。
この日も朝一番の大仕事を終え、ファイはようやく次の支度に取り掛かるのだった。
朝は戦場である。戦場の敵。それは自分の「胸」に他ならない。
どういうわけか、この国では――その中でもごく一部の人間ではあろうが、ファイのような金髪碧眼、いわゆる見るからに「外国人」とわかる人間に対して一種の偏見がある。
外国の人間だから性的な価値観が自分たちよりもフリーダムである、気軽い、進んでいる、遊びなれている。聞けば思わず「そんな馬鹿な」と思うようなことが、現実に盲信されていて、ファイはひどく驚いたものだった。
中でも最悪なのが、金髪碧眼かつ胸の大きい女性は例外なく貞操観念が薄い、と思い込んでいる男だった。
マリリン・モンローがセクシャルな魅力を引き出すことに苦心して、その一つとして髪をブロンドに染めた、などという逸話があってもそれは彼女のビジネスチャンスにおける話だ。
髪の色が金色だからって、頭の中身が軽いわけではないし、男好きなわけでもない。勿論誰とでもベッドで仲良くしたいわけではない。
初対面で意味ありげに電話番号やメールアドレスを渡されたり、逆に聞かれたり。あからさまに誘う男もいた。
何度かそんな誤解と思い込みに遭遇するうちに、ファイも自衛手段を講じざるを得なくなった。
幸いなことに、教師という職種は会社員のように毎日かっちりと制服やスーツを着込む必要はない。
だらしが無くない程度に野暮ったいラインの服を着、後は化学教師という自分の担当部門に合わせて白衣を着込めばいいだけなのだ。
巨大な学園都市だけあって、学園周辺の店は充実しているし、ファイが白衣姿で学外近隣をうろうろしていても不思議に思われることも無い。この学園に赴任してからというもの、夜遅くにわざわざ人通りの多いところまで遠出をする必要もないのだ。
おかげで最近はすっかり妙なのに声をかけられることもなくなった。
同僚は皆良い人で、生徒は可愛い。
恋人、と呼べる人間はもう何年もいないけれど、欲しいかと聞かれるとそうでもない。
穏やかな生活と天秤にかけるほどの存在でもないのだ。
平和だなあ、と呟いて、ファイは朝の戦場を締めくくった。