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本日は今年最後の休日でした。
明日以降、年末はお仕事ノンストップ。
マッサージに行ったら待ち時間が結構なことになっていたので諦めて帰りました。
50分も待つ気はさらさらない。
このネタが浮かんだ時から参考に、と思い戦国時代の城作りや町作りの本を読んだのですが…。分かんねえよ…。
でもファイはアシュラパパのとこに居たときに結構いろんなことを勉強させてもらってると思います。
でないと地形的にいじっちゃいけない場所の雪融かしたり、土いじったりは大惨事に繋がると思うんだ…。いくら魔術が使えても。
通販の発送作業は本日終えました。
お届けまでもう少々お待ちください。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ。
領主の館、その広間で喧々囂々と声が響く。
その中心で諏倭の領主は眉間の皺を深くしていた。既に十分な貫禄を備えている領主であるが、この座に集まる面々の中では年若い。
身分の上ではこの領地の長であっても一応、自分よりもはるかに年嵩な近臣たちも立ててやらねばならない。
長きに渡って魔物に暴虐の限りを尽くされ、僅かな実りを近隣領地に掠め取られてきた諏倭である。
魔物や不当に侵入する他領土を戦いのもと打ち払うことのみが領主の業ではない。
その土地をならし、治水を整え、民の暮らしを落ち着かせるのにまず何から着手すべきか。
各々が真剣に知恵を絞りあっていた。
しかしながら、其々の人間が其々に己が考えばかりを主張すれば、話し合いもままならない。
荒事ならば他にひけを取ることなど微塵も無い黒鋼であったが、弁舌や理論が先立つ政の駆け引きは得手ではない。
これが何か裏があるような――野心や計算づくで腹に一物持って己の利益のために甘言を弄するような相手であれば、力技で一刀両断、という手段に訴えることも出来るのだが。
集まった人間たちは誰をとってみても、かつては『滅びた』とさえ言われた諏倭の復興を望みとしてきた者ばかりだ。皆が本心からこの領地の行く末を案じている。
それが痛いほどに分かるから、黒鋼もどうまとめたものか、と更に頭を悩ませることになるのだ。
「揉めてるねえ」
場違いなほどにのほほんとした声が耳を打つ。これだけ騒がしい広間でもその声だけははっきりと聞こえるのに不思議な気持ちもしたが、今はそれに安堵するのも本当のことだ。
手渡された湯飲みの中は昼間なので当然ながら茶だ。いっそ酒でも煽りたいくらいの気分だったが。
「氾濫する川が先か、新しい農地が先か。開墾しようにも今のままじゃあ頭数が足りねえ。人手を回せばどれかに穴があく」
「黒様こういうの苦手だもんね」
思いっきり遠慮がない言葉に黒鋼も溜息しか出ない。事実だ。
まとまらない言い争いにげんなりしている黒鋼の表情に、ファイは可笑しさを隠せない。凛とした姿も好きだけれど、今はなんだか可愛らしくて構いたくなる。
「ねえ」
それでも、困らせるのが本意ではないのでそろそろ手助けくらいはしようか、と唇に笑みをのせた。
「五年、十年かなあ?長くかかるけど、川自体の形を変えて農地を今よりも東に移せば今よりも畑も田んぼも大きくできるよ。今のままだと川が氾濫するたびに薬草の群生する場所が流されて大変だよねえ。かといってまるまる別の場所に植え替えるとうまく育たないし。水に飲み込まれず、かつ貴重な薬草が育つだけの豊富な水量も維持させないと。ついでっていうとあれだけどいっそ集落丸ごと東に移してもいいかもね。土も調べさせたけどきちんと手入れされてる森なだけあって問題もなさそう。むしろ地形条件としては今までのところよりも農作業にも向いてると思うんだよね。突貫でも三割くらい?収穫量があがるかなあ。集落も広げられるし、ひと所にまとめた方が城下の防衛もしっかりする。そういえば去年知世姫から貰った苗木が結構お役立ちで、成長が早いし種も多いんだよね。これを色んなとこに植えて育ててもらえば売りに出せる。人手については、黒様や皆が頑張って魔物退治したおかげで諏倭が他よりも落ち着いてきてるから、お隣や近くの領土から諏倭に移りたいって人が増えてるんで、一定期間開墾作業に従事した人間を優先的に諏倭に定住できるように受け入れるような形を整えれば出来ると思うんだけど?」
一応他領土の間者だといけないから何人かに一人くらいは忍をつけて監視はしないといけないけどねえ。
のんびり茶を啜る巫女が滔々と淀みなく語るのに、いつのまにか黒鋼だけでなく、広間中の視線が集まっていた。
「試算、要る?」
こてん、と首を可愛らしく傾げる巫女の、金色の髪が長閑に揺れた。
試算が出たら出たで、ことは急げとばかりに視察に走る者、新たな試算をはじめる者、と様々だった。
しかし概ねファイの言った通りの方向に進むらしい。
疲れた、とばかりに黒鋼は遠慮なく領主の私室で寝転がっていた。労わるように膝を貸したファイが優しい手つきで黒鋼の髪を撫でる。
じろり、と赤い瞳が少々恨みがましい視線になってしまうのは仕方なかった。
「最初からお前が仕切ればいいんじゃねえか?」
「最初から手助けを期待するような人間じゃないよ、君も、皆も」
だから大好きで手助けしたくなるのだ、と笑う巫女に領主はこの日一番深い溜息をついた。