[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
お知らせにも書いたとおり、来年のスパコミ発行のアンソロジーに参加させていただきます。
執筆陣が個人的にツボな方ばっかで、私にとっては垂涎ものの贅沢極まりないアンソロジーです。
…自分が場違いなのは置いておいて。今から凄く楽しみで待ち遠しくてたまらない。
テーマを頂戴したときに思わず5種類くらいネタがぶわーって湧いて、やべー、どれ書けばいいんだ、と思ったのでした。
いや、本当そろそろ書かないと…。
今年は今週の金曜の休日を最後に、大晦日までお仕事ノンストップです。
労働基準法なんて蜃気楼です。
あると見せかけて存在してないのです、きっと。
というわけで反応がさらに鈍いことになります。
ご容赦くださいませ。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ。
父と息子が剣の修行を始めた。
毎日素振りから始まり、泥だらけになって帰ってくる姿を母親は目を細めて見守る。
最近は素振りだけではなく、打ち合いもするらしい。(とは言っても父親に軽くいなされているだけなのは見ずとも想像できる)
年季が違う、といくら言っても聞かない。そもそも父親はこの諏倭領内に止まらず、日本国の帝も認める剣の使い手なのだ。子どものかなう相手ではない。
とは言え、息子はその父親似の負けず嫌いなのだ。
おかげですっかり生傷が絶えない。
年が明ければ、新しく生まれてくる仔馬を貰う約束も取り付けたらしい。嬉しそうにファイにそう報告してきた。
父親そっくりの顔があどけなく、ファイに満面の笑みを向けてくる。
一切の疑念もなく、ただ純粋に母親のことを信頼し、向けられる幼子の愛情。
愛しくて愛しくて。
泣きたい。
本当は、何もかもから守ってやりたい。
傷つけるもの。辛いもの。悲しみや苦しみや恐れ。
涙、痛み。
別れ。
全部、与えずにすめばいいのに。
そう願う一方でファイはもう知っている。
何もかも先回りして、与え、庇うのは、愛情ではない。
すやすやと布団の中で安眠を貪る子どもの頬をちょん、とつついてみる。
よほど疲れたのか、夕飯を食べながら目を擦っていた。
満腹になると布団にたどり着くよりも先に眠りこけてしまった息子を、父親は笑いながら抱き上げて布団に寝かせた。
息子の寝顔を覗き込みながら、仕方ねえな、と笑う彼が教えてくれたのだ。
じっと横顔を見つめるファイの視線に気がついたのか、黒鋼が「どうした」と振り向く。
無言で甘えるようにその肩に頭を預けて瞳を閉じた。苦笑するのが気配で分かる。
愛し方や、信じることを。
全部、この人が教えてくれたのだ。
それだけで、今自分の慈しんでいるものが、更に途方もなく愛しくて堪らなくなる。
髪をかすかに擽る彼の吐息が心地よかった。
全部、この人から始まった。