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発端は先日の祭歌について、由和から貰ったコメントでした。
「赤子祈願の歌と知って、その日は恥ずかしくて歌えなくなっても、次の日からは一日中フルコーラスに違いない。」
なんだか楽しそうv
というわけで書いてみました。
まあ、あの…いろいろとありえないと思うので飽く迄単発ネタとしてお楽しみください…。
では下からどうぞー。
ぱたぱたと障子の桟にはたきをかけるファイが楽しそうに歌を歌う。
昨日子授け祈願の歌だと教えてやるときょとんとした後に、顔を赤らめて俯いてしまったのだったが。
知らないで歌っていたであろう昨日とその事実を知っている今日とでは大分違うと思うのに、何を思ってか今日のファイは朝っぱらからやけに上機嫌に歌に勤しんでいる。
「おい」
昨日それは子授け祈願の歌だって教えたばっかだろうが、そう言う黒鋼にファイは不思議そうにこくりと頷いた。
「うん、だから歌ってたら赤ちゃん授かるんだよねー?」
「……は?」
何を言っているのか、理解は出来るがはっきりいって理解したくない発言に黒鋼の意識が綺麗にすっ飛ぶ。
黒鋼の反応をろくに見ていないファイは少し気恥ずかしそうに首を傾げながら、不思議そうに問いかけた。
「だって大人が性交すると子どもが出来るんでしょー?オレと黒様…もしてるし、だったら赤ちゃん生まれるのかなあってー」
「……」
誰でもいい。この状況をどうにかしてくれ。
黒鋼は、生まれてから初めて。
心の底から誰かの助けを希った。
過酷な幼少時代と、王の側近として、あるいは養い子として魔術の上達に勤しんでいた長い年月。
利発な魔術師が知識欲や使命感に駆られて新たな知識を学びとることを誰も留め立てはしなかった。
だがしかし、否、だからこそなのか。奇跡的な確率で、突っ込んだ性教育を施そうという発想は誰もいやしなかった。
おそらく賢い子であったから、すでにその手の知識を得ていると思われていたのかもしれない。
あるいは王自らが引き取った子どもであったということや、本人が既に国に比肩する者のない高位の魔術師であるという事実に周囲が一線引いた結果かもしれない。
おかげで書物や聞きかじりの知識で何となく繁殖の仕組みを理解しているファイだったが、根本的なことが色々と、それはもうごっそりと。抜け落ちていた。
きょとん、とするファイを前に、黒鋼は誰かに説明を押し付けて逃げたい気分でいっぱいだった。