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別名ドナドナの巻。
私は「メイキング」が好きです。
本でも映画でもなのですが、作る過程というのを見るのが楽しくてなりません。
なので、イラストサイトさんの色塗り過程や画材紹介を見るのが大好きです。
が、文章を書く作業は基本的にもっと地味なので、ご披露するようなものもあるまいな、と思っていたら、とある方と「私も製作過程みるのが好きで、どんなふうに文章を作られているのか興味あります」というお話をしました。
絵描きさん字書きさんと、やることは違ってもやっぱり表面には見えづらいとこでどんな風にしているのか、って皆気になるものなんですね。
なんというか…花として見える部分だけでなく根っこの部分がどうなっているかを探る、というのも楽しみなんですよね。
そんなことを不意に思いました。
では下からです。
黒鋼の飼い主は可愛らしい少女だった。
少女は黒鋼の背中の上に乗っけられた毛玉二匹の姿を見ると、上品に口元に両手をあてて「まあ!」と小さく叫んだ。
「黒鋼、こちらはどちらの猫ちゃんですの?まさか誘拐に手を染めてはいないでしょうね」
「誰が好き好んでこんなちび共攫ってくるか!!?」
「ちびだから黒たんはファイやユゥイが好きじゃないのっ…!?」
「ユゥイもファイも黒たんのこと大好きなのに…っ、お嫁さんになりたいのに…っ!」
「ああもう!ややこしい!泣くな!!」
途端に瞳を潤ませてしょげる二匹をおろしながらぺろぺろとその頬を舐めて慰める。
とりあえずは仔猫の体から発される妙な匂いを消してしまわなければ、と二匹は黒鋼の飼い主の手によってお風呂に入れられた。
普段ふわふわの毛並みを誇るだけに、全身にお湯をあびるとぺたんと白い毛が寝てしまいなんとも貧相である。
さすがにこれでは黒鋼もぐっとこないかもしれない。
ユゥイとファイは鏡に映った自分たちの姿を見て、ちょっと落ち込む。
毛並みを優しく洗う飼い主さんのお名前は知世ちゃんというらしい。
わしゃわしゃと泡立てられるシャンプーは仄かな花の香りがした。
優しく優しく撫でられて、とろん、と瞼が下がりそうになる。
シャンプーを洗い流し、ふかふかのタオルに受け止められる頃には、すっかり夢と現の境を彷徨っていた。
「黒鋼にこんな可愛らしいお友達がいるなんて知りませんでしたわ」
二匹に優しくドライヤーをあてながら、知世はそう二匹に話す。
真っ白な手が優しく白い毛を梳いてくれるのをファイもユゥイもごろごろと喉を鳴らして歓迎した。
「にゃー、本当はただのお友達じゃ駄目なのー」
「脱お友達で黒たんのお嫁さん候補にならなきゃいけないのー」
「黒鋼の?」
「でも黒たん『お前らは駄目』ってー」
「『けっとうしょつきのお婿さんを飼い主がさがしてくれる』ってー」
思い出したら涙が出てきてしまった。
「あら、私は大賛成ですわ」
くすん、と鼻を鳴らす二匹の頭を撫でて知世ははっきりと言った。
「だってお二人ともこんなに可愛らしいんですもの。黒鋼は贅沢者ですわねえ」
ぽかん、と二匹は知世の顔を見つめた。真っ蒼は瞳にじいっと見つめられるのに、知世もにっこりと微笑み返す。
「…本当?」
「…いいの?」
「ええ。一度おふたりの飼い主さんにご挨拶させていただきますわね」
思いがけない援軍に二匹は信じられない気持ちでぱちぱちと目を瞬かせた。
「アシュラさまいいって言ってくれるかなあ…?」
「あ…!」
そういえば忘れていたのだが、二匹の結婚相手を決めるのは飼い主なのだと黒鋼が言っていた。
飼い主さんに反対されたらどうしようもない。そう思って、耳も尻尾もへにゃ、と伏せられてしまう。
けれども。
「大丈夫ですわ。心配なさらないで」
にっこりと知世が笑顔で二匹にそう言った。
約束、とそれぞれの白い前足に小指をちょん、とあてて指きりげんまんの真似事までして。
こうして、黒鋼本人のあずかり知らないところで「お婿さん計画」は発進された。