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チョコお題2の続きっぽくなりました。翌日くらい。
頑張って5もあげるぞー。
04. 不器用な君
すっかり遅くなってしまった帰路をファイは一人で歩いていた。
いつもなら職員宿舎お隣の特権と称して黒鋼の車に乗せてもらうのだが、あいにく今日は仕事がずれ込んで一人、帰るのが遅れてしまった。
つき合わせるのも申し訳ないし、どちらか都合が合わないなどということも今までにだってあったから、先に帰っていてもらったが少し残念な気がしてくるのはしょうがない。
(だって昨日は…だったし)
寂しいと思う端から昨夜の行為を鮮明に思い出し、一人赤面する。愛された記憶がまだ色濃く残るだけに余計に寂しいのかもしれない。
夜の気配がじわりとそこかしこに潜む冬は、一人でいるといつの間にか深く物思いに耽ることが多くなっていけない。
その隙間を縫って冷気がふ、と肌をさす。
寒い、と声に出すのも億劫でいつしか小走りに自分の部屋を目指していた。
がしゃん、と静かな空気の中響き渡る音にファイは顔をあげた。
職員宿舎の入り口付近に設置されている自販機に誰かがいる。背中を向けてはいるがファイには誰だかわかる。
背中にじゃれつこうと思ったところで、前触れなくこちらを向かれた。
一切驚く気配もみせず、遅かったな、と声をかけられる。
「ただいまー、黒むー」
「手、赤くなってんぞ」
「そう?」
かじかんで少し動かしづらい自分の手をファイが見つめる。たしかに指先はちょっと目にも分かるほど赤くなっていて寒そうだ。
「やる、間違えた」
黒鋼が無造作に缶を一本放り投げてきたので、慌てて受け取る。運動神経は悪い方ではないが、もう少し余裕のある渡し方をして欲しい。そう思ったファイだが手の中に落ちてきた温もりが今は何より嬉しい。
(気にして、待っててくれたんだ)
黒鋼が買っているコーヒーと自分がもらったココアは、見本の中でも間違えようがないほど異なる位置に配されている。
「黒たーん、早く部屋行こう」
ココア一本で幸せになる自分は安上がりかもしれない。
チョコレイト五題
capriccio(http://yucca.b7m.net/capriccio/index.htm)