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バレンタイン中に終らせられて良かったです。
誤字脱字あったら教えてください…。
大学生同居黒ファイ。
知識欲の前にうっかり三大欲求を忘れてしまいそうなファイ。
05. ほんとはチョコよりキスが良い
レポートの締め切りに追われ、傍らの資料をひっくり返してはパソコン画面と格闘すること数日。
不眠のせいで吐き気と寒気までしてきたが、そもそもこの課題提出自体、高熱でできなかった課題の代替案なのだから。
途中で何度か同居人が飲み物や軽食を運んできたり、休養を促していた気がする。喉が渇いて手を伸ばしたカップがほの温かかったり、いつの間にか食器がさげられたりしていたから、多分いろいろ面倒を見てもらっているのだろうけれど目の端がちかちかと傷むのを我慢しながら、ディスプレイの文字を追っていた。
同居人に車を出してもらってどうにか構内まで乗り込んだことは覚えている。
手馴れた運転で心地よく体を揺らされて、あとは朧げに、赤信号や見慣れない壁を視界に納めていた。見慣れたカーペットが目に飛び込んだのが最後だったから、多分家に帰り着くまでどうにか意識はあったのだろうが、それがおそらくは最後だった。
人の足音と家具や食器の触れる音。
睡眠と意識を乖離させていくその音は人の生活の音で、眠りを欲する一方幸せでいつまでも聞いていたい気持ちになる。
むー、と唸りながら体を起こすと毛布がずるりと床に落ちた。体中が嫌な音を立てそうになるのは、無茶な寝方をしたせいではなく今までの不摂生な生活のツケだろう。いつ意識をなくしたのかすら覚えていない体はちゃんとソファに収まっていて、体がひえないようにと毛布もかけてあった。
彼らしい、と口元が緩む。
「起きたのか」
ごそごそと動き回る音を拾った同居人がこちらへとやってくる。
寒い、と呟けば落とした毛布を拾い上げてもう一度かけられた。
「もう少し寝ておけ」
頬を軽く撫ぜていった手が気持ちよくて、自分から頭を擦り付ける。凄く甘えたい気分で、もう少し触っていて欲しいと思う。
「顔が蒼いぞ、血糖値下がってんじゃねーのか」
睡眠をとった割りに血色のよくならない頬を、希望通りに大きな手のひらで包まれてほうっと息が漏れる。
オレは年中栄養不足なのですー、と嘯いて背中に両の腕を回すと、まずは何か食え、と窘められた。
手近な机の上に置いてあったアーモンドチョコの包みから一粒、口元に押し当てられる。
かり、と噛り付けば甘味がすぐに口に広がり、心なしか体に染み渡る気がした。
けれど。
「あのねー、黒わんー」
「何だ?別の物のがいいか?」
「オレこっちのほうがいいなぁ」
薄い、男らしい唇を人差し指でそっと辿る。
呆れたようにため息をつくその唇が、優しく落ちてくるのをちゃんと知っている。
チョコレイト五題
capriccio(http://yucca.b7m.net/capriccio/index.htm)