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こんなところで終ってすみません。
でもまだ続きます。
これだけシリーズ名付け忘れてて便宜上「大学生パラレル」で通してるんですけど、大丈夫でしょうか。
書いてる本人が一瞬何て紹介しようか迷うんです。
今日は病院の予定がお流れになったので朝からバタバタと家内を片付けていました。
と言ってももっぱら仕事関係のあれこれですが。
来週こそ3日間休みがあるので(連休ではないですが)年末へ向けての更新を頑張ります。
年末はまともな更新できませんから、今から書き溜めておきます。
書き溜める、と言った端から「なんかほっとくと勿体無い気がする」と言い出して一日に3個くらい小話投下してたりして…。
拍手ありがとうございます!
では下からどうぞ~。
夢を見た。
良く見知った顔がいておまけにしかめ面だったので、らしいと思いながらもファイはぼんやりと疑問に思う。
「夢なのになんで黒様いるんだろう?」
夢にまで見てしまうほど会いたいと思っていたのだろうか?そう自問して、やはり会いたいと思っていたに違いないとすぐさま納得してしまう。
そんな自分に呆れながら、どうせ夢ならこんな風にリアルな反応ではなくて、嘘でもいいから笑顔でも見せて甘やかしてくれてもいいのにな、と思った。
年下の男はぶっきらぼうでいつも眉間に皺を寄せていて、そして優しい。
笑ってくれなくても甘やかしてくれなくても、好きなのは結局そんな彼だ。
絶対に手に入れることなど叶わない、彼だ。
頭がふわふわとして、あてどない思考が次々と湧いては霧散する。
夢の世界のくせに眠たくて、考えることも億劫だった。しかしそのまままた覚醒へと向かう睡眠へ身を委ねたら、目の前の彼の姿を失ってしまうのだと思うと眠ってしまうのが惜しい。
『おい、…て……のか』
黒鋼が何か言っているのだが、ファイの意識はぼんやりとしていて何を言っているのか全く理解出来ていない。
「何言ってるか…わかんない…」
夢の中ならもっと便利な方がいいのに、と思った。夢の中でさえもこんな隔たりを感じなければいけないのが悲しくて、ファイは黒鋼に手を伸ばす。
手が黒鋼に振り払われなかったことに少し気を良くしてそのままするりと身を預けた。
今は夢だから、どんな無茶苦茶も我儘も構わないのだと自分に言い聞かせる。
そうでなければ夢でだってこんなことは言えやしない。
「好きだよ」
ふわふわと揺らぐ頭とは裏腹に唇は鉛のように重かった。体も沈みそうなほど重いことに気づく。
「オレは…黒鋼が、好きなんだよ」
ごめんねえ、そう謝ってしまえば次から次へと望みは口から溢れ出た。
「いっぱいぎゅって抱っこされたい。
いっぱいキスしたい。
一緒の部屋でご飯食べて、セックスして、そのまま同じベッドで寝てたい」
どうせ叶わないから、なんだって言ってしまえばいい。
現実でないと知っていても、目の前の黒鋼が拒むのではないかと思うと怖くて、顔が見えないようにしがみついたのに、やんわりと引き離されて顔を覗き込まれる。
黒鋼が何だか奇妙な物を飲み込んだような顔をしていて、それが妙にリアルでおかしくて悲しかった。
頭の奥が朦朧としてくる。
『…なあ…し……が……お前……』
「うん」
黒鋼がなんと言ったのかすらもろくに理解しないまま、ファイは頷いた。
「いいよー。
黒鋼の言う通りになんでもするし、なんでもあげるよー」
オレにあるものならなんだってあげる。全部あげる。
だからお願い。
オレの全部になって。
ずるずると、そのまま意識はそこから遠ざかる。
泥の中に沈むような感覚に、ファイは黒鋼の姿を手放した。
頬の冷たさに意識が引きずり出されるようにはっきりする。
まだ重い瞼を開けると瞳の端に溜まった涙がまた零れた。
叶わない恋だと夢の中でさえ自分は知っていて、泣きながら目覚めたのだ。
疑問に思う前に、自分の部屋ではない白い天井と左腕に繋がれた点滴にここが病院なのだと理解する。
おそらくは倒れた自分を見つけた誰かが運んでくれたのだろうと思った。
誰かの足音が病室の前で止まり、ファイは慌てて袖で涙を拭いた。
病室の扉は音を極力たてないように設計されていて、わずかなその音は部屋に入ってきた足音にかき消された。
看護師かと思って頭を動かしたファイはぎくりと体を強張らせた。
「何泣いてんだよ」
「なんで君がいるのさー」
不機嫌な声音に、ああ、彼だと実感する。
とうに諦めようと思い切ったのに、何故彼はそれをゆるしてはくれないのだろう。
半ば八つ当たりに近い思考のファイの瞳からは新たな涙が流れた。