[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
特にそんな描写は無いですが女体なので苦手な方は回れ右。
どうにか休日らしい更新になったでしょうか?
十一月からは更新できるのかすら分からない日が出てくるので今のうちに頑張ります。
では下からどうぞ~。
街角のあちらこちらにオレンジ色のジャック・オ・ランタンがその存在を主張している。
冬に近づきつつある冷たい夜の空気の中、思い思いの格好をした小さなお化けたちが可愛らしくぴょんぴょんと飛び跳ねるように住宅街のあちこちを走り回っていた。
「ハロウィンかー。オレたちの小さい頃はそんなことしてなかったのにねぇ」
「お前が言っても説得力ねえよ」
傍らをぱたぱたと走り抜ける小さな子供を見つめながら、ファイが懐かしそうに語る。
外見は金髪碧眼と明らかに日本人離れした少女は、だがしかし幼いころからこの国で育っているため、文化面での影響は明らかに見た目を裏切っている。
「だってオレたちの時は秋のイベントっていったら秋祭りとか…七五三だったよねえ。亥の子祭りもあったっけ?」
「だな」
路地を一つ曲がれば、途端に子供たちの喧騒は遠ざかり、秋の冷たい風が吹き抜ける。
ファイは何度か断ったのだが、部活後の軽い疲労をおして黒鋼はファイをマンションまで送り届ける。
恋人、という関係になってから幼馴染の時とは違った行動の一つ一つが少し恥かしい。けれどけして嫌な感情ではない。
気づくと自然と唇が微笑んでいて、黒鋼にどうした、と聞かれた。
「何でもないよー」
どうにもくすぐったい自分の反応を自分自身誤魔化したくて、ファイは咄嗟に思いついたことを口にした。
「ねえ、黒鋼。オレたちもハロウィンしよ?」
「ああ?」
「Trick or treat!」
もちろん、本気でお菓子が欲しかったわけでないのだが、黒鋼は少しその表情を弛ませた。
「食い物もってんのお前の方じゃねえか」
そう言って、菓子じゃないけどな、と胸ポケットから小さな紙袋をファイに渡す。
何だろうと不思議に思いながら開けると、中からは銀色のブレスレットが出てきた。羽をモチーフにした淡い水色の飾りの揺れるブレスレットはとても可愛らしくて、目の前の黒鋼とはどうしても繋がらない。
「これ…貰っていいの?」
おそるおそる確認すると、当たり前だろうがと笑われる。
「お前にやるんで買ったんだよ」
部活ばっかりに忙しくて今年の夏はどこにも行けなかったからその埋め合わせがしたかった。そう告げる黒鋼と手の中のブレスレットを何回も見比べて、ファイはここがまだ住宅街だということも忘れて抱きついた。