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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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日本国特殊設定小話です。
珍しくこんな時間に更新です。

100000hit記念リクエスト企画第2段。
七瀬紫苑様リクエスト「日本国永住(特殊)の、日本国にファイが来ることになったきっかけ」です。

このシリーズはまだまだ書きたいものが幾つもありますので、これからもお付き合いいただけると嬉しいです。
七瀬様、ありがとうございました!


拍手ありがとうございます。


では下からどうぞ。








肌にたゆたう熱情が滑り落ち、心地よさと混じりあった気だるさがファイの全身を支配する。
心と体。そのどちらも充足させるような交合は甘く体の隅から隅まで伝播した。
いつまで、とふと思う。
一体いつまで、自分はこの人と一緒にいられるのだろう、と考えた。
抱き合う肌の熱さも、狂おしさも、全て彼から与えられた。けれど、彼には帰っていく故郷がある。何も持たない自分とは違うのだ。
もう、旅も終ってしまった。後は別れの刻の訪れを待つだけだ。
彼から何もかも与えられて、そうして最後には一人取り残されてしまう。自分は一体どうなってしまうのだろう、と思うと心が心から冷えていく。
そんなファイの不安が溢されたのを、黒鋼は聞きとがめた。

「来ないつもりだったのか?」
黒鋼の声には心外だという響きがありありとみてとれる。
どこに、とは言うまでもない。
まるで共にあることが当然であるような。そんな物言いを傲慢だとさえ思えない。
彼の中でそんな当たり前にされたことが、嬉しくて体のの芯が震えるような錯覚さえした。
瞳がじわりと熱くなって、そっと瞼を閉ざした。
「いきたい」
唇は震えたけれど、今この瞬間のたった一つの望みを違うことなく音にする。
「君と、いきたい」

そうして、微笑んで抱き合う腕の強さと熱さに、何一つ偽りなど無かった。


嘘は、たった一つだけ。

 

「巫女としての役目を授ける前に、一つだけあなたにお伝えしなければなりません」
日本国最高位の巫女の座す前に膝をつくのはファイただ一人きりだった。黒鋼の姿はない。
二人が揃ってこの日本国へと帰り着いてから既に数ヶ月の時が流れている。ファイも徐々に日本国の生活に慣れ始めた時だった。黒鋼に諏倭の復興が打診されたのは。
既に彼の隣に姿のあるのが当然とされるファイに、彼の地を治めるための術者――その多くが巫女と呼ばれるものとして、ともに諏倭の地に赴かないかと月読本人から話を持ちかけられた。
けれど、そのためには条件がある。
「巫女の役目は魔物の進入を防ぐため結界をはり、土地の安寧を守ること。そのためには理を正しく導き、務めを行う責務があります。その術者を…真実の姿から歪めたまま、偽りの形のままには、出来ないのです」
月読の言葉は正しい。彼女が痛ましい表情をしているのはファイの本意ではないのだ。そんな表情をさせてしまっていることが申し訳なく思う。
偽りが白日の下にさらされる日が遅かれ早かれ訪れることをファイは知っていた。
それがこの日だっただけのことだ。
そう覚悟を決めても、黒鋼に嫌われるのだろうかと思うとやはり心は痛む。
「わかっています」
彼の言葉に、喜びに打ち震えた時と同じように、やはり瞳が熱くなって瞼を閉ざした。それなのに、こんなにも心の色は違ってしまっている。
悲しい時に感じる思いと、嬉しい時に感じる思いが、何故こんなにも似通ってしまっているのか、とファイは不意に可笑しくなった。
それでも、知世に微笑み返すことが出来て、良かったのだと思う。


襖の開く音がしたが、ファイは動かなかった。
黒鋼の目が驚きに見開かれるのが分かった。
一目で分かったはずだ。ファイの体が、彼が知り尽くしたものではないことに。
元の性を捨てた体だ。彼が慈しんでくれたのは。

少しだけ丸みを帯びた頬から顎の輪郭。細く、小さな肩の線。
緩やかな衣服の上からでもはっきりと分かるほど、これは『女』の体。

魔術で性を偽り、男として存在していた自分を、黒鋼は愛してくれたのだ。
男の体の時には、何故自分が女でないのか、と嘆いたこともある。けれど女の体になった今、嬉しいよりも誇らしいよりも、騙し続けていたのだという罪悪感と情けなさで胸が塞がれるようだった。
なんという矛盾だろう、と自嘲する。

気持ち悪いと、おぞましいと忌避されるのを当然のこととしてファイは微笑んだ。

初めて見せた女としての笑みに、黒鋼が見入られたことは知らぬまま。


 

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