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オンリーで素敵なイラストをたくさん見せていただいて、ちび妄想が止まりません。
では下からどうぞー。
取り合えず要りようのものを買い揃えなければならない、と黒鋼は双子を連れて朝市へと出かけた。
通りに面して入り口が開かれている大小様々な店棚や通りを歩く行商人。大きく開けた通りには皆が思い思いに荷物を広げて商いをしていた。
大きな腕にすっぽりと二人揃って収まる双子は、物珍しそうにきょろきょろと視線だけで辺りを見回している。
草履屋や小間物屋や帯屋の女たちの威勢の良い掛け声が市を賑わせている。軽食を売っている屋台からは美味しそうな匂いが立ち上り、先ほど朝餉を食べたばかりの三人の鼻をくすぐった。
人の多さに緊張しているのか、双子は黒鋼の胸元をひしと掴んでいる。
帝の膝元とあって、白鷺城の城下町の治安は頗る良い。人が多く、賑わうがゆえに諍いが起きることも多いが、概ね安全な地でもあった。
城下の警備のため市に紛れている忍や兵の姿もちらほらと見受けられるが、どこかのんびりとしている。
騒がしさが害意で無いことが徐々に分かってきた双子がおずおずとだが、黒鋼にしがみ付く力をゆるめ始めた。
緊張が解けてきたのを見計らって、黒鋼が縫物師の店棚へ声をかける。
すぐに中年の女職人が出てきて、黒鋼の腕に収まる子ども二人に目を留めた。
「おや、旦那の子かい?」
「んなわけねえだろ。預かりもんだ。それよりこいつらに適当に見繕ってやってくれ」
そう言って示された双子を縫物師がじっと見つめた。
金髪の人間など人で賑わう白鷺城下でもそうそうお目にかかることなど無い。化け物、と詰られたらどうしよう、と怯える双子を縫物師が感嘆したように見る。
「初めて見たけど、黄金色の髪も綺麗なもんだねえ。昼間にお月様が落っこちてきたのかと思ったよ」
そう言って躊躇することなく双子の頭を撫でると、さっさと空色の反物を持ち出して来て双子の身の丈に合うように寸法を測り始めた。
たしかに双子は異質な外見だが、商いを生業をたてている女商人や女職人の多くは子育ての真っ盛り、という者が多い。
金髪碧眼という異色であっても、目の前にした小さな子どもへの庇護欲が勝るようだった。
一通り測り終えると、「昼過ぎには仕上げとくからね」と言って三人を送り出してくれた。
ついでに質の良く安い物を扱う帯売りと履物売りを教えてもらい、黒鋼は双子を抱えて通りを歩き出す。
買ってもらった下駄をぎゅっと大事そうに胸に抱え、双子が嬉しそうに笑った。
「黒さま、あのね、あのね、ありがとうっ!」
「このくつの紐、赤いの。ファイもユゥイも黒さまの目とおんなじのが良かったのっ」
「お団子おいしーね。ファイねえ、上の茶色のが甘くて好きー」
「黒さま重くない?いっぱい買ったからもうお金ない?大丈夫?」
初めて買い物に出たのが余程嬉しかったのか、矢継ぎ早に双子は言い募るので、正直二人が互いに何を言っているのか黒鋼には分からない。
いい加減、喧しい、と一喝したいのだけれど。
「頭撫でてもらっちゃったー」
「またおいでって、言ってくれたー」
腕の中で双子が噛み締めるように幸せそうな顔で笑うので、仕方ねえ、と胸の中でこっそりと呟いてそれは諦めることにした。
空の色の着物は、きっと二人に良く似合う筈だ。