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旅行中の二人の小ネタなどが今後頭の中に降って来た時には、またお目にかけることもあるかもしれません。
だって熱海の情報去年いただいてですね、新しく見どころとか見てたらなんか凄くいいのですよ。
ナイトクルーズとかもあるんですね~。
女子高生奥様シリーズ自体はまだまだ続きます。本当に、ネタだけはあるので。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました~v
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ~。
熱海の温泉旅館の駐車場に一台の車が停まった。
中から出てきたのは若い男女二人で、特に女性の方はようやく少女という年齢から脱したばかりのようにも見える。眠たいのか、目を擦りながら車から降りたので余計に幼さが際立つのかもしれない。
背が高く精悍な顔つきの男性と、特に目を引く金色の髪のうら若い、しかも可愛らしい女性とあってはどうしたって人目をひきつけた。
だが二人ともそんなことに頓着する性格ではないらしく、少し大きめの荷物を男が持つとさっさと旅館の中へと消えていってしまった。
後に残された、基たまたまそれを見ることが出来た通りすがりの人たちは一様に目を瞬かせ、なんとも眼福である事態に遭遇出来たことを内心で喜んだ。
多分恋人同士だろうと、口々に手をつないでいた二人についての憶測を噂し合う。
黒鋼とファイが新婚旅行先に選んだのは熱海だった。
双方の親や元後見人たちが本人たち以上に盛り上がっていたのだが、黒鋼の仕事のこともあり都心からも車で移動可能、かつゆっくりと落ち着ける場所ということでここに決めた。
予約していた名前を告げると初老の女将が出てきて二人に挨拶をする。
落ち着いた和風の造りの本館と、独立した離れの風情が売りの旅館は黒鋼の選択だ。
ファイはにこにこと「黒様と一緒ならどこでもいいよ」と答えた。
どうやら二人が泊まるのは離れの一つらしく、女将自らが案内を買って出た。
新婚さんですね、おめでとうございます、と言われてファイの頬が瞬時に赤くなる。耳まで染めて俯いてしまっても周囲からは可愛らしく見えるだけなのだが。
実際に新婚だという二人のことを従業員の女性たちも不躾で無い程度にチラチラと見ながら、羨ましいという表情は隠さない。
無論俯いてしまっているファイがそれに気がつくはずもないのだが。ついでに、俯いているものの黒鋼と手をつないでいるおかげで転んだりということは無いが、人前でずっと手をつなぎっぱなし、ということが恥かしいということにも今は気がつきそうにない。
女将の説明もあまり耳に入らず、黒鋼が横でそっと苦笑した。
初々しい奥さんの様子を、皆が微笑ましく見ていた。
昨日の今日でいつものようなスムーズな目覚めを期待するわけにもいかず、いつもの起床時間を過ぎてもなかなか起きようとしないファイを黒鋼が起こした。
だが、ぼんやりとした頭で自分を覗き込んでいる旦那様の姿に気がつくと、奥様は盛大にビクついた。
何ということは無い。昨晩すき放題触られて鳴かされて、少しばかり本能的に警戒しただけなのだから。
恥らってシーツからなかなか出てこようとしないファイは確かに可愛らしかったが、シャワーくらいは浴びないと出発出来ない。
風呂場に運ぶのにシーツごと抱え上げると「みゃっ!」と猫の仔のような声をあげてじたばたと暴れたのだが、途端にぴたりと動きが止まる。
怪訝に思い黒鋼がファイの顔を覗き込めば、顔を真っ赤にしてファイがプルプルと震えていた。
「どうした」
「…う~っ」
涙目で黒鋼をきっと睨むファイだが、あいにく昨日の媚態の延長のようなものでしかないので黒鋼にとっては痛くも痒くもない。
「中、…黒様が出したの出てきちゃった」
恥かしそうに告げる奥様にしばし旦那様の思考が止まる。
ファイが起きる前に新しい湯は張ってあった。
時計を見る。常から時間に余裕を持った生活を心がけているため少しだけなら余裕はあった。
「…風呂はいるからちょうどいいか」
何が。と聞く前にファイの体からシーツが剥ぎ取られ、洗濯機に放り込まれた。
嫌な予感がして逃げようかとちらりと考えたファイだが、脱衣所の鏡を見て悲鳴を上げてしまう。
「きゃああああ!!」
今なら恥かしさに死ねると思った。
自分の体のそこかしこ、赤く散らされた痕がなんなのか。聞かなくても分かりすぎていた。聞きたくない。
へなへなと蹲ってしまったファイを面白そうに見つめる黒鋼は、自分も服を脱ぐと片腕でファイを抱き上げ、そのまま浴室へと運んだ。
朝から、大変美味しくいただかれた。
おかげで移動の車の中でファイはずっと眠っていたのだ。
おまけに「新婚さんですね」なんてトドメをさされて、言葉にしようがない恥かしさに打ち震える。
離れに入ってからも座椅子に座ったまま動こうとしないファイに黒鋼が声をかけた。
「いい加減機嫌直せよ」
ファイが望んだことにせよ、朝のあれは別に省略しても良かったんじゃなかろうか。そんな思いとちょっとばかりの恨めしさをこめてファイは黒鋼をじと、っと睨んだ。
「だって足の付け根痛い…。へ、変な感じずっとしてて…辛いんだからっ!」
黒様の馬鹿。と膨れるファイに黒鋼もどうしたもんかと思う。
初めてで慣れない体勢を長時間取らされていたのでその筋肉が傷むのも、初めて男を受け入れた部分が違和感を感じてしまうのも仕方がないのだが。
お前がしたいって言ったんだろう、と返すのが最低の選択だとはさすがに分かっている。
拗ねたり、怒らせたくて抱いたわけではないし、出来たら喜ばせてやりたくて旅行に来たのだ。
らしくない、とは思いながらもひたすら甘やかしの一手に絞るしかないか、と黒鋼が苦笑した。ちっとも嫌ではなかったが。
「こっち来い」
そう言うとぷん、とそっぽを向いてしまったファイを横抱きにして持ち上げる。
慌てて黒鋼の首にしがみついてくるファイだって何も本気で怒っているわけではないのだ。
「何かあるの?」
そう聞くファイに言葉では答えず、黒鋼は目配せすると寝室にあたる部屋の襖を引いた。
「え、わ!凄ーい!」
「お前が好きそうだと思ってな」
途端にはしゃいだ歓声を上げるファイに気に入ったか、と尋ねると、今までの機嫌の悪さが嘘のようにファイが笑顔を向けてくる。
和風の寝室には天蓋付き寝台が設えられていた。
和モダンとして少し前からこのような設えが若い女性に人気なのだという。
これだけ嬉しそうにしている様子をみると、わざわざこの離れを予約した甲斐があったというものだ。
天蓋付き寝台だがけばけばしさや過剰に華美な装飾はなく、上品に周りの和室にしっくりと溶け込んでいる。悪くはない。
「ね、これオレのために予約したのー?」
わざわざ自分のためにこんなとこ指定しねえよ、と言うとファイが照れくさそうに笑い抱き上げられたまま黒鋼の頬にちゅ、と軽い口付けをおくる。
「ありがと」
恥かしそうに黒鋼の瞳を覗き込んで、もう一度、今度は唇へと口付けた。